2008年11月13日木曜日

学校で習ったことは通用しない

成人した教え子たちと飲む機会があります。
私が生徒会を担当したときの役員の子たちの話です。

赴任した当時、その学校は荒れていました。校内暴力とかではなくて、無気力で覇気のない学校でした。
1年部に配属になった私たちは「先輩の悪いところは真似するな。この学校を変えるのは君たちだ!」と1年生に熱く指導しました。
縁あって3年間その学年を受け持ち、彼らが2年生になったとき、私は生徒会を担当することになりました。
生徒会の役員を選出するとき、学年みんなで真剣に考えました。
これまでの役員は、真面目でおとなしく先生の言いなりになるような子ばかりで、一般生徒とは隔たりがありました。これでは生徒会とは名ばかりで、主体的な活動はできません。
リーダーにふさわしいのはどんな人か? 誰になら生徒会を任せられるか? 誰になら付いていくか?
学年集会や学級で何度も何度も話し合い、役員選挙をして5人のメンバーが決定しました。

曲がったことが大嫌いな正義感の塊・T君(会長)、思いやりがあって気が利く大和撫子・Mちゃん(副会長)、クールなイケメン詩人・K君(副会長)、明るく爽やかスポーツ万能・H君(執行委員)、元気ハツラツおてんば娘・M子(執行委員)。

それぞれの個性を生かして最高の生徒会を作ってくれました。

リーダーがしっかりしていると、学校は良い方向へ動き出します。一般の生徒も彼らを信じて協力してくれました。

私の教員生活の中で、一番まとまりがあって仲の良い学年でした。生徒たちも充実した学校生活を送れたものと自負しています。

しかし、大人になった彼らは言うのです。

「正しいことを堂々と実行できるのは学校の中だけだ。社会に出たら、学校で習った正義は通用しない。」と。

「先生は学校でしか働いたことがないから分からないでしょ?」と。

「自分たちは適当に折り合いをつけて周りに合わせて生きているけど…Tはなぁ……。」

飲み会の席に生徒会長T君の姿がないことが、ずっと気になっていました。

先生には教えたくなかったんだけど…と前置きしながら、みんながT君のことを話してくれました。高校へ進学し就職してからも、彼の正義感は健在で、間違ったことは正し、弱いものを助けて頑張っていたそうです。

しかし、そんな彼の生き方を面白く思わない人々もいます。

就職先でかなり浮いた存在になってしまったのだそうです。自分が正しいと信じてやってきたことが自分を苦しめている不条理に、若いT君は潰されてしまったのだろうと思います。現在は仕事を辞めて、キャバクラ通いで酒びたりの生活だとか……。

あんなに輝いていたT君が。自分のことより他人のことを優先して考えるT君が……。悲しさより申し訳なさを感じました。もっと世の中の汚さを教えておくべきだったかもしれないと。

学校では正しいことを教えます。

しかし、その正しいことは今の世の中では通用しない。

では、子どもたちにどう説明すればよいのか……。

この現実、矛盾に直面し、自分の無力さを痛感します。

6 件のコメント:

つかさ☆ さんのコメント...

こんばんは!つかさです☆

難しいですね・・・
社会に出ると、本来見本にならなければならない人間が、不正やごまかし、いじめなどに首を突っ込んでいる。正直者がバカを見る世の中!何とかならないものですかね・・・

音源視聴して頂き、ありがとうございます。
地味な曲ですが、気に入っていただいて何よりです。

粘っても出来ない事もあれば、この曲のように降って来る曲もあり・・・

でも何かが生まれる瞬間って、意外とこんなもんなんでしょうね。

ロバ亀子 さんのコメント...

彼、Tくんの話で、考えていたんですが、案外別の展開があるのかもしれないな、と僕なりに整理してました。
自分のこころの陰に重なるものを持ちながらも、生きるために一生懸命働く彼女らの姿に、案外、Tくんはこれからの自分を思案しているのかもしれませんしね。
学校で学ばせてもらった一人として、学校で得たものは何だったのかを、時々考えることがあります。

「人生の目次」であったのかもしれない。それが僕の今のところの感想です。

その目次、立ち止まって考える時には、結構役に立つんです。あとは、自分がどう考え、行動するか。不完全なものなら、なお結構。続きを自分で探す楽しみがある訳ですし。

junchan さんのコメント...

つかさ☆さんへ

正直者がバカを見る。今の世の中は本当にその通りですね。
何とかしなくては!と思うものの、何も出来ないのが現状です。

音楽だけでなく何事も、考えて苦心しているときより、ふと心を楽にした瞬間に光が見えるのかもしれませんね。

junchan さんのコメント...

ロバ亀子さんへ

人生の目次ですか。なるほど!そういうふうに考えればいいのですね。
長い人生の中で、若いT君には今の時期が必要なのかもしれません。彼が自分なりの解決策を見出し、また歩き出すのを見守っていきたいと思います。

はりねずみ さんのコメント...

何だか懐かしささえ感じる内容です。
この記事を読ませていただく限り、私も中学校くらいまで彼と同じような生き方をしていたように思います。

やっぱり周りとの温度差に泣いたこともありました。でも先生や学校から学んだことが無駄だとは思いません。
きっと今必要な試練を受けているのだと思いますよ。(えらそうなこと言ってすみません)

私が社会に出て気がついたことは、間違ったことよりも正しい事に人は傷つくということでした。

junchan さんのコメント...

はりねずみさんへ

お返事が遅くなり申し訳ありません。

T君にはこの試練を乗り越えて、さらに大きな人間になってほしいと思います。
若いときの苦労は買ってでもしろ!と言いますからね。

間違ったことよりも正しいことに人は傷つく。深いですね。